ちょうど1年前、修士1年生の時の出来事。
トビタテ!留学JAPAN一期生として選出していだたいたおかげ
シンガポールのTEMASEK Life Sciences Laboratory(国立の研究所)で
半年研究留学することができた。
8月下旬、心を躍らせながらスタートした留学。
初っ端から言葉の壁にぶつかった。
彼らが話している言語が中国語なのか英語なのかさえ分からない。
それもそのはず。
シングリッシュと言われる、ここの英語は中国語交じり。
1文の中に英語も中国語も入っている。
アクセントは全て最後、発音も独特。
そんなシングリッシュや新しい生活にも慣れはじめ、
研究にも本腰を入れ始めた留学開始から2ヶ月目。
あなたは何ができますか?
新しい実験手法を教えてもらっている際に言われた一言。
とても大きな衝撃だった。
彼は悪気があって言ったのではない。
それは分かっている。
だからこそ辛かった。
何も答えられなかった。
何気ない一言だからこそ、現実を私に突き付けた。
この言葉には
”私はこうやってあなたに様々な実験手法を教えているけど
これまで何をやってたの?一人でできる実験はないの?”
こういった意味が含まれていると感じた。
その時、初めて思い知った。
私は何もできない
トビタテ!留学JAPANの応募書類に
”より多くの実験手法の会得する!”
なんて書いておきながら
そもそも何もできなかった。
できると思い込んでいたからこそ
私は何もできないという事実が
私にとって本当にショックだった。
これまで必死に勉強と研究に取り組んできたのに。
学部2年生から特別に研究室に配属させてもらい、
専門の勉強をスタートした。
平日も土日も朝から晩まで勉強した。
(おそらく人生で一番勉強していた)
周りが遊んでいようと必死で勉強した。
その甲斐あって学部3年生4月から実験に着手することができた。
(通常は学部3年の12月に研究室配属になる)
時には朝から朝まで実験した。
早くいろんな実験ができるようになりたかった。
早く実績を残したかった。
だから必死で頑張った。
でも頑張ったつもりなだけだった
どんだけ頑張っているつもりであっても
世界で活躍する研究者の中では私は何もできないも同然。
(国立研究所の研究員と大学院生では
実力の差があるのは当たり前と言ってしまえばそれまでだが)
とても悔しかった。
これまでの私の頑張りは何だったんだろう。
無駄なことをしていただけなのだろうか。
何で私はこんなことしかできないんだろう。
自分の実力の無さに絶望し、
これまでの自分の行動に後悔し、
落ち込むことしかできない自分が嫌だった。
研究所に通うのが辛くなった。
新しい場所での生活にわくわくしていたはずなのに
新しい事を吸収したいと意気込んでいたのに
何もかもが嫌になった。
でもこんな私を救ってくれたのも誰かの何気ない一言だった。
今から頑張ればいいじゃん!
この言葉がすっと頭の中に入ってきた。
誰からか言われたのか、
何かで読んだのか、
はたまた夢の中の出来事なのか、
それさえ覚えてないけれど
たったこの一言が私をいつもの無駄にポジティブな私に戻してくれた。
それと同時に私をひとつ成長させてくれた。
確かに今の私は何もできない。
それは事実。
だったら今から変えればいいだけ。
変わりたと思った瞬間から変わればいい。
せっかく留学してるんだから
今しか学べないことを全力で学ぼう。
そう思えた。
そこで彼に
確かに私は何もできない。だからこそここにいる。あなたの技術を教えてほしい
そう言った。
すると彼は笑顔で応えてくれた。
たくさんの技術を丁寧に教えてくれた。
学ぶことが楽しくなった。
吸収のスピードが明らかに変わった。
そのおかげで多くの事を学ぶことができ
帰国後もそれを駆使して研究に取り組んでいる。
自分で使うだけではなく、同じ研究室のメンバーや他大学の先生にまで
その研究技術を伝えた。
あの一言がなければ今の私はいない。
本当の自分の能力に気づかず、
満足したままで貪欲に学ぶことない私。
そこから抜け出すことができた。
研究技術を得るよりもこの事の方が大きな収穫となった。
語彙力がないからありきたりな言葉でしか表せないけど、
留学は私を成長させてくれた。
本当に本当にかけがえのない経験。
私の宝物。
P.S.
私は学費を減らすために飛び級までしたほど
詳しくは↓
http://www.canpath.jp/stories/288
金銭的な余裕はありません。
現在は、日本学生支援機構の奨学金を借りています。
(返済しなきゃいけないなら奨学金ではなくただの借金だと思うのですが)
院の奨学金は学科内で成績一位になれば返済免除ですが、
学部時代の奨学金は利子付き。
卒業と同時に多額の借金を背負うことになります。
(リレー口座開設の資料を横目に)
返金不要な奨学金"トビタテ!留学JAPAN"の支援なしでは
留学なんてとてもじゃないけど挑戦できませんでした。
本当に感謝しています。
これからも多くの人がトビタテ生として海外にトビタツことを願って。