Canpath
2649 views
1 応援!
0

10月

1.勉学
 勉学をしませんでした。奨学金や卒業論文のプレッシャーに反して、早くも留学の目的を見失い戸惑っています。また気分が沈み込むことが多く、1日中ベッドで過ごす日も多い月でした、元気です。以下ⅰ〜ⅲで授業について書きたいと思います。

ⅰFinnish Art
 留学後にフィンランドの美術館とアーティストレジデンス施設でのインターンシップが決まっている私にとって、外すことのできない科目です。千葉大学では、生涯学習の1つとして美術館の中で行われる教育普及プログラムに興味があり、美術館の学芸員の資格を取り、芸術学の研究室に所属していました。
 この授業の一環で、大学近くの美術館Joensuun Taidemuseoに何度か足を運びました。

今月から企画展として、フィンランドの現代アーティストJan Nevaの作品展示が始まっていました。ギリシャ神話に登場する神々をテーマに、油絵の上から溶かしたアルミニウムをかけたり燃やした布を貼ったりする手法が近年の彼の作品の特徴のようです。ただ手法云々よりも、彼の作るただれて焦げた濃い青色が強く印象に残りました。美術館の帰りに通りかかった、夜空と街がそのまま映り込む川の青と、Jan Nevaの青が重なって、思わず立ち止まりました。静寂の青、全てがどこかで繋がり合っていて、実際に目で捉えられるのはそのほんの一部のような気がします。

 別の日には同じ美術館でKaa(M)os 2014というイベントがありました。私は夕方から偶然訪れたのですが、2人のアーティストによるフィンランドアートのギャラリーツアーに参加し、地元のビーガン向けカフェが提供する珈琲と茸マフィンを食べながら再び企画展を見て、初めてカンテレとアコースティックギターの生演奏を聴き、コンテンポラリーダンスを見て、ワークショップに参加しました。


美術館で作品を前に、食べたり楽器を演奏したり踊ったりギターリストが椅子を蹴り飛ばしたりアーティストが壁をよじ登ったり、というのは私には新鮮で、芸術は美術館の中の絵画や彫刻だけではないのだと当たり前のことを改めて感じました。色々な世代の人々が多く集まり、柔らかい雰囲気の中でのびのびと五感を使って各々に芸術を感じていたように思います。盛んに感想を聞き合っていたことも印象的でした。市民の芸術への高い知的な関心とアートの敷居の低さ、多様な芸術の側面を感じました。

ⅱFinnish Music Education, Basic of Finnish Music Education
 美術館で初めて音を聴いた奇妙な楽器が、フィンランドの民族楽器カンテレだったことを後から知り、フィンランドの音楽と思わぬ所でチャンネルが繋がってしまいました。その時の演奏は、現代音楽の潮流の1つである実験音楽でしたが、弦の音は懐かしく素朴で柔らかな音で、そのギャップに惹かれたことを覚えています。若者向けのロックやポップミュージックと、伝統的なカンテレを組み合わせることが最近の流れなのだと、後から聞きました。また、学校の音楽の授業はとても面白かった!と友人達が目を輝かせるのでつい気になってしまい、直前になってフィンランドの学校の音楽教育に関する授業を受講することを決めました。
 授業の中では、フィンランドの民族音楽の歴史や学校の音楽のクラスの基本的な知識を得るだけではなく、実際に手遊びに合わせてフィンランドの民謡を歌ったりカンテレを弾いたりと、刺激的で子供の頃に戻ったように感性を揺さぶられる、気がします。世代を超えて受け継がれてきたフィンランドの民謡やカンテレのような民族音楽は、フィンランドの自然や人々のアイデンティティそのものだと感じました。この2つの授業はまだ始まったばかりなので来月詳しく書きます。

(ⅲSurvival Finnish)
 早速単位を落としました、春学期に頑張ります。フィンランド語の授業の不可が確定したのと、インターンシップ先から「フィンランド語でコミュニケーションをとれるようにしておいてほしい」という衝撃のメールが届いたのと、友人が一対一でフィンランド語を教えると急に申し出てくれたのが、全て同じタイミングだったので、私の力の及ばない所で物事はなるようになるのだと悟りました。フィンランド語の数字と簡単な挨拶を覚えました。

2. 生活
 寒く暗いです。10月半ばに再び雪が降り、一時は-15℃にまで気温が下がりました。友人は、まだ全然寒くない「涼しい」と繰り返し主張し、おばあちゃん達は散歩しながらアイスを食べ、私の自転車はブレーキが凍り転倒し痣を増やし続けたので、もう笑いと狂気でしかこの寒さは乗り切れない、予感がします。

 秋休みが1週間あり、友人達がKuopioを案内してくれました。Puijo towerから一望した、湖と森に囲まれる街には目を見張りました。バイキング時代がテーマのレストランで初めてトナカイの肉を食べてバタービールを飲み、友人の実家で地元のチョコレートをつまみながらショットし、翌日はダラダラと昼間に起き出してリンゴンベリーのケーキを食べたり、森を抜けて湖の畔を散歩するなど、完璧な旅行でした。

美しく長閑な田舎、1つ1つ手作りで小さな工夫に溢れた温もりあるホーム、人生を楽しむ余裕のある人々、そしてやはり寡黙な自然、豊かです。

 今月は、大学近くの貸し切り状態植物園Botaniaに行ったり、毎週水曜日に敢えて酷いアメリカ映画を観て皆で詰ったり、international women's dayに女性の権利に関する活動をしている市民機関でカップケーキを作ったり、フランスのお酒を片手に澄んだ夜空の星を数えたり、アートギャラリーでPauli Parkkine展を見たり、台湾の友人が2人がかりで毎週中国語を教えてくれ鍋を囲んだり、大学のイベントに参加する度に疲れすぎて翌日を潰すなどして、10月は終わりました。

この記事を書いた人

Akari Yamasakiさんの海外ストーリー