Canpath
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超絶サウナ体験

コウヴォラ郊外の村に車は向かい、総合スポーツ施設に辿り着いた。僕たちのお目当てはバスケでもフットサルでもスイミングでもなく、アヴァントだ。

アヴァントとは何か。僕もコウヴォラに来るまで聞いたこともなかったが、アヴァントは湖岸にあるサウナ小屋で80度以上の熱に耐えてからその後すぐに凍てつく湖にダイブするという、スポーツ?営み?拷問?これが何のカテゴリーに属するのは別にして、とにかくこれこそがフィンランドのフィンランドたる所以なのだ。

スポーツ施設の裏に出てサウナ小屋までの階段を下りる。上裸でマイナス10度以下。すでに思考が停止するほど寒い。

友は言う。「サウナに入る前は体温が上がってないんだから、入った後に湖に入るよりも相対的に冷たいとは感じないはずだよ」

論理的に聞こえるけど、絶対ウソ。僕はとりあえずサウナに入った。

昨日の電気のサウナではなく、薪を燃やして石を熱し水をかける本物のサウナだ。水をかける度にとんでもない熱波が体を襲う。地元民のおばちゃんたちはこの明らかに普通じゃない状況の中、普通に世間話をしているから信じられない。

友達に「カメラ頼むぜ!」と言い、僕は清水の舞台からとうとう飛び降りることにした。足を滑らせないように階段を下り、くるぶし、膝、そして一気に首まで・・。

いや、つーか、これは何・・・

僕は一瞬後に階段をできる限りの早さで駆け上がり(それでもかなりスロー)、この冷たさをどうにかしようと思ったが、目の前にあるのはサウナだけで、僕には逃げ場が残されていないことを悟った。しかたなく、また80度の世界へ。

友は言う。「外気が氷点下で、水は水である限り0度以上なんだから、外よりも水の中の方があったかいはずじゃん」
これもウソ。絶対ウソ。この極寒地帯では論理より感覚が勝る。

サウナの中でほんの少し冷静さを取り戻した僕は、地元のおじちゃんおばちゃんたちがサウナ帽子を被っていることに気が付いた。
「あの、その帽子って何のために被ってるんですか?」
「おお、あっちのおじさんに聞いてごらん」
あっちのおじさんがにやりと笑いながら口を開く。彼は帽子を被っていない。
「わしはサウナ帽を一度も被ったことがないんじゃ」と自分の頭を指す。
ハゲ頭・・・。
しまったーー。あとの祭り。

僕は結局80度の世界と0度の世界を4回ほど行き来して、この日の超過激フィンランド体験を終えた。

この記事を書いた人

一風
現在地:ミャンマー
オランダの大学院を出て人道支援を始める。現在国際機関に勤務。

一風さんの海外ストーリー