語学学校のハードな授業にもようやく慣れ、学部での授業の準備の時期になった。アンカラ大の言語歴史地理学部のキャンパスは、アンカラの中心部から徒歩圏内。イタリアのブルーノ・タウトという高名な建築家のデザインによる、風格漂う建物がそびえる。
内部の大理石の床、木造で外から構造が見えるエレベーターなどが、歴史を感じさせる。
今日は、留学中に転がっている様々なチャンスの中で、「無駄にせずに済んだかな?」と実感できるものをいくつか書き留める。
①履修登録期間
「授業について話を聞きたい」という名目で教授の部屋に行き、1対1でお話できるチャンス。
語学力に不安があっても、教授の話の中で「え、それどういうことですか」と聞けばもっと簡単な言葉で言い換えて説明してくれる。
教授としても、遠い国から自分の研究分野に興味を持ってはるばる訪ねて来られて、悪い気はしないだろう。昨日二人の教授とお話したが、忘れられない一日になった。日本語とトルコ語の類似点と相違点について、体調を崩したときのおすすめのお茶、日本とトルコの家庭生活の習慣について、おすすめの外国語学習法…様々なことについてお話ができた。トルコ語の練習になったことも言うまでもない。
②寮
寮生活を送るなら、ぜひとも現地の学生とルームメイトになりたいと考えていた。母国語をシャットアウトした環境に身を置きたいため、そして、生活習慣や価値観の違いを学んだり、表面的でない深い話や議論をしたいためだ。私は日本の他大の学生二名とルームメイトになって、二週間ほど過ごしたが、語学学校以外でトルコ語を多く練習する機会がないことに危機感を感じていた。ちょうどそのタイミングで、日本語学科の新入生が近くの部屋にやってきた。既に出来上がっている人間関係の中に、コミュニケーションを完璧にとれない状態で入るのは困難だが、新入生ならそこは問題ない。幸運にも日本語学習者なら、タンデムラーニングが可能である。食堂のおじちゃんの紹介で知り合い、仲良くなれたため、「君の部屋に引っ越してもいいか」と頼んだ。彼は快諾してくれたが、寮長が難関である。
「トルコ人の友達の部屋に移りたいです。彼は日本語学科の新入生で、お互いに教え合えるので。」
「なぜ移りたいんだ」
「トルコ語しか話せない環境に身を置きたいんです。語学学校は外国人ばかり、寮に変えればルームメイトは日本人。これでは来た意味がありません。」
「お前すでに十分話せるじゃないか。」
「いいえ。大学で授業を受けるレベルには程遠いです。」
「お前の部屋、一人空いてたよな。お前が映るんじゃなくて、彼に来てもらったらいいんじゃないか。」
「それでは意味ありません。トルコ語しか話せない環境じゃないと嫌なんです。」
「本当に、めーっちゃ、移りたいのか(真顔)?」
「本当に、めーっちゃ、移りたいです(真顔)。もうその友人には話をつけてあります。もちろん日本のルームメイトにも。」
「うん…まあ…いいだろう。」
一件落着。
今後も、チャンスを見極め、必ずものにできるよう意識していきたい。「こういう機会積極的に活用するといいよ」
みたいなアドバイスをいただければ幸いです。