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「フランスのムスリム移民社会を学ぶ」ツアー概要

募集要項

スタディツアー「フランスのムスリム移民社会を学ぶ」(冬学期授業として開講)
現代フランスのムスリム移民をめぐるコンフリクトについて学ぶ。パリ、マルセイユ、リヨンにて、移民集住地区、ムスリムのコミュニティ運動やモスク、移民やレイシズムについて研究する教育機関、などを訪問。

日程: 2016年2月9日~22日 また11月~1月中に事前ゼミを実施。
募集人数: 5名前後
旅費: 渡航費を全額支給 現地滞在費は自己負担あり
参加資格: すべての学部生 フランス語またはアラビア語が使える者は優遇

予備エントリー: 10月9日(金) まで(期日を過ぎても可)
本エントリー: 10月19日(月)a.m. 9:00 まで(締切厳守)

1.概要
 フランスには、様々な国や地方からの移民が多く居住する。フランスは出生地主義を取るため、フランスで生まれればフランス国籍を取得することができるため、ひとえに「フランス人」と言えど、そのオリジンは多種多様である。また、フランスでは、その基本思想である共和国主義の元、すべての人は国の元に平等であるとされ、国民全員がフランスという国家に属する。また、厳格な政教分離(laicité)の原則により、公的空間と私的空間を厳密に区別する傾向がある。そのため、公立学校においても,イスラム教徒の女性のベールや,キリスト教の十字架の装飾品など宗教を如実に示すものの着用は原則認められないとされる。そのため、国家は、国民の出生や宗教の違いを認知しない。(=エスニックブラインド)
 しかし、近年、ヨーロッパで起こる過激派のムスリムによるテロリズムなどを機に、アラブ諸国からの移民や、旧植民地であるアルジェリアなどを含むマグレブ諸国からの移民、そしてその第2第3世代(フランス国籍所有)が、そのエスニックな属性を理由に、就職やその他さまざまな場面で差別される問題がおきている。メディアによる過剰な報道、政治家の扇動によって、その意識は広まり、定着しつつある。今回のツアーと、それに伴う予習ゼミでは、フランスにおけるムスリム移民について、その歴史的な背景や世論の誤解、マスメディアの責任、極右政党の支持率上昇など、今現在起こっている事態について、今後フランスは何を求められるのか、また日本人である私たちは、何を知らなければならないのかを考えた。現地では様々な団体を訪問し、当事者たちから直接話を聞いたり、質問に答えていただく機会があった。また、移民街にも足を運び、彼らの生活の実態をこの目で見て、肌で感じもした。

フランス人(les Français)とはフランスの主権保持者であり、民族的出自や宗教的信念を問わず、フランス市民社会を構成する全ての人を指す。したがって、フランス人には、フランスの海外県及び植民地に居住する人々も含まれ、「フランス民族」というものはない。また、今後も、フランス国内で出生するか(出生地主義である)、帰化することによってフランス国籍を取得すれば、いかなる民族に属そうとも、「フランス人」となりうる。
ー wikipedia

2.ムスリム移民問題の歴史的背景
 ことの発端は、第二次世界大戦後の深刻な労働力不足にある。この対策としてフランスは移民の受け入れを奨励し、労働力を補った。彼らは母国から単身でフランスに移り、働くようになるのだが、その中にムスリム移民も多く存在した。当時のムスリムに対するイメージとしては酒を飲まず、従順で真面目、よく働くなどかなり肯定的なものが主流で、企業側から彼らに対して、礼拝の時間を設けるなど、労働環境の向上を心がけるなどして、友好的な関係を築いていた。しかし、経済が回復し、生活水準が向上するにつれ、移民たちの賃金も上がり企業側は、労働者たちを抱えきれなくなる。そのうちヨーロッパでは各国が不況に陥り始め、「脱工業化」と呼ばれるような、国内の工場を海外に移転させ、人件費の削減を目指す動きが見られるようになる。こうした影響からフランス国内では大量の失業者が生まれ、マグレブ諸国から移住してきたアラブ系の人たちも路頭に迷うことになる。
 その後フランス国内の就職は高い学歴など、個人の技能などを重視するものがほとんどになり、フランス語能力が低く、貧困により充分な教育を受けることができないでいた移民たちは、仕事を探すことが極端に難しくなってしまう。彼らに対して、フランス政府は生活保障を与えて、支えるが、フランス国籍を有する国民でさえ学力がなければ就職が難しくなってくる中で、彼らの支払っている税金で、仕事のない移民にその税金から生活保障を賄うという流れに不満が生まれるようになる。しかし、ムスリム移民の貧困化は改善されず、不況から脱出する目処も立ってない今、この問題は徐々に深刻なものとなっていく。

行程
2月9日〜11日パリ
- パリ第十大学訪問
- デファンス(La Défense)再開発地域へ
- パリ政治学院(Institut d''Etudes Politiques de Paris)にて卒業論文計画発表
- INALCO(langues-O)授業内で卒業論文発表
- 国立移民歴史博物館(Cité nationale de l’histoire de l’immigration)

11日〜14日エクサンプロヴァンス(Aix-en-Provence)・マルセイユ
- エクス政治学院大学(Institut d'Etudes Politiques d'Aix-en-Provence)にてセミナー受講
- マルセイユ移民街散策
- マルセイユ・エスペランス(=マルセイユの希望)のメンバーの方と対談
- ノートルダム・ド・ラガルド寺院(La Basilique Notre-Dame-de-la-Garde, Marseille)へ

14日〜21日リヨン
- ポールボキューズ学院(Institut Paul Bocus)にてランチコース
- リヨンカトリック大学、授業内で卒業論文計画発表・交流
- ヴェニシュー訪問
- サンフォン市庁舎にて市長、市議街議員の方と対談
- ボーランブラン団体訪問
- CBSPにてセミナー受講
- UFCMにてセミナー受講
- AL KINDI 学校訪問・対談
- リヨン散策

3.参加動機
 東京外国語大学で東アジア地域を専攻していることから、日本の抱える移民問題と比較検討することを目的とする。日本に多く居住する韓国、中国の方々や、その第2、第3世代について考える上で、日本よりも大規模な移民社会を構築したヨーロッパの例を知ることは有効であると考える。以下、志望動機書より引用。

 欧州において移民の問題が深刻なのはドイツとフランスだというイメージが強い。先月 のロイター通信は「ドイツ連邦統計局によると、ドイツ在住の移民の数が2014年には3. 7%増加し、過去最高の1100万人に達した。全人口の5分の1が何らかの移民のバック グラウンドをもっていることになる。」という記事を更新している。このような移民の流入 に対してフランス政府は、約20年に渡り、様々な政策の改変を行ってきた。時には門戸を 封鎖し、時には家族を呼び寄せることを認め、その政策はまだ完全なものではないように感じられる。
 欧州の移民問題は、第二次世界大戦以降の労働力不足を緩和するために、安価な労働力と して大量の移民を受け入れたことに由来する。これらの移民は、戦後の復興と各国の経済成長を支え、大きな役割を果たした。彼らの出身地は中東や北アフリカ諸国など様々だが、フランスは、旧植民地にイスラム教徒が多かったこともあり、ムスリム移民の人口が特に多い。 こういった状況下で1973年、1979のオイルショックなどをきっかけに始まる慢性 的な不況が始まると、国民たちですら自国での職に困るようになり、その不満や、怒りの矛先を移民たち、特にムスリム移民に向けるような傾向が表れ始める。これだけなら、全く持って理不尽な話であるが、特に苦汁をなめたイスラム教徒たちは過激化し、実際にテロ行為に及び、シャルリー・エブド事件などに代表される、移民問題が発端となる事件を引き起こ してしまう。それにより欧州に住むイスラム教徒たちの印象がさらに悪化、反イスラムが勢 いを増してしまう結果になった。これがフランスにおける移民問題の大きな流れだと思う。
 しかし日本からでは、新聞やテレビなどの報道からしか情報を得ることが出来ないため、 実態が掴めない。私は東アジア地域専攻だが、「日本で大々的に報道された、中国の弁護士一斉拘束も、現地で気にしている国民はほとんどいない」「韓国で日本を忌み嫌うのは高齢者に多い。若者に反日の意識は薄く、むしろ興味を抱いている」など、日本での報道内容と実態に大きな差がある、というケースには多数遭遇してきた。そのため「イスラム教徒は過激であり、テロ行為に及ぶ危険あり」と言われたところで、もはや鵜呑みにできないのだ。 そういった過激な行動にでるのは少数のはずであり、多くの人は彼らに共感こそするものの、そういった行動に出るべきではない、と考える、あるいはまったく理解できない、 という人々も存在するとわたしは信じる。かといって、この仮説がどの程度正しいのかを確認する術はわたしにはない。このスタディーツアーで、フランスの都市を回り、実際に彼らと触れ合い、話を聞くことが出来れば、間違いなく自分の仮説を検証し、実情を自分の目で見ることができると思う。以上の理由で、私はフランス移民問題について学ぶ、この企画に参加したいと思う。

ー 本エントリー提出書類「スタディツアー・フランスのムスリム移民社会を学ぶ」への参加志望動機

この記事を書いた人

ellen.t
現在地:日本
東京外国語大学 言語文化学部 言語文化学科 東アジア地域専攻・朝鮮語科 国立行政法人 日韓大学生討論会 北京語言大学 短期留学 (2015/7/22 ~ 8/20) スタディツアー「フランスの移民社会について学ぶ」(2016/2/9 ~ 2/22) 北京語言大学 短期留学 (2016/7/19 ~ 8/18)

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