今回はティドビンビラにあるキャンベラ深宇宙通信施設に行ってきました。深宇宙通信施設と聞いて「何だそりゃ」と思われるかもしれません。やっていることは名前から推測できる感じのものそのものでして、宇宙で活躍中の人口衛星と通信を行っています。また、この施設はNASAの「深宇宙ネットワーク(Deep Space Network)」の施設のひとつとして運用されています。ティドビンビラの他にはスペインのマドリードとアメリカのゴールドストーンにあり、24時間体制で地球のどこかから衛星追尾をすることができるようになっています。
大学キャンパスから30分ほど山間の道を車で進んでいくと羊だらけの牧場の向こうにパラボラが見えてきます。学部時代では長野県臼田にある衛星運用のための臼田宇宙空間観測所64mアンテナ関係の研究をしていたのでワクワク。日本人の電波天文学者が勤務していらっしゃってお忙しいスケジュールの中で案内していただきました。
現在CDSCCで運用されているアンテナは70mアンテナ(DSS-43)と34mアンテナ3台(DSS-34, DSS-35, DSS-45)。他にも引退したアンテナさんたちが敷地内に置いてあります。あと34mアンテナをもうひとつ建設中だそうです。世界各国にあるNASAの深宇宙通信用アンテナには番号が付いており、DSS (Deep Space Station)で始まっています。こちらは34mのアンテナ。
70mアンテナ(DSS-43)は衛星追尾をしていないCSIRO/ATNF (オーストラリア望遠鏡機構)の望遠鏡のひとつとして運用されており、電波観測が行われています。このアンテナにはSバンド、Xバンド、Kバンド、Lバンドの受信機が搭載されており、L以外の受信機はコーンの根元の部分にあります。衛星通信のために特に使用されるのはSバンドとXバンド。KバンドはH2Oメーザーの観測ができます。太陽系の外に出てさらに冒険を続けている衛星ボイジャーの追尾をできるのはこのアンテナだけらしいです。行った時は火星の探査機を追尾してました。
この26mアンテナ(DSS-46)はアポロで月面着陸をした際の最初の画像を受信したアンテナです。歴史的にも重要なアンテナのひとつです。引退した後はアンテナを上に向けてずっと置いてあるそうです。(このポジションはアンテナにとって一番安定します。観測に使う電波望遠鏡もよく強風や悪天候の時にはこのポジションになります)
そしてこの写真に見える白いポール、なんだと思いますか?なんと日本の電波天文衛星はるかの通信に使われていた11mパラボラアンテナ(DSS-33)の跡なんです!今は11mアンテナは今はスペースVLBIははロシアが打ち上げた衛星Spektr-Rが活躍していますが日本のプロジェクトも結構成果あげてましたよね。今はこのアンテナさんはノルウェーで活躍しているそうです。
この日は観測室で電波観測の見学もさせていただきました。ありがとうございました。
ここはオーストラリアでも多くの巨大アンテナを一度に見れる有数の場所だと思います(他は22m望遠鏡が6台あるナラブライとか?)。また、一般の方向けのビジターセンターもあり、楽しい場所なので宇宙好きの方はぜひ行ってみてください。