ティドビンビラのキャンベラ深宇宙通信施設での高校生を対象としたアウトリーチプロジェクトに参加してきました。リモートコントロールによる木星の観測です。Global Schoolという文科省のプログラムの一環として大阪の高校生が7人キャンベラに訪問しており、そのうちのアクティビティのひとつが今回の観測でした。
なぜ木星を観測?
NASAの木星探査機であるJUNO。2011年8月に打ち上げられたJUNOは現在木星に向かって旅を続けており、2016年7月に木星に到着する予定です。木星に到着後、木星の重力場、磁場、磁気圏などの詳細な観測を行う予定です。木星は地球の20000倍もの磁場があることが知られており、JUNOをうまく軌道に乗せるためには磁場のすきまを通っていかなければいけません。木星の自転軸と磁場の軸は微妙にずれており、木星の自転によって磁場が強い場所も断続的に変わっています。JUNOを無事に木星軌道に乗せるためにもJUNOが木星に到着するまでに地球から木星の観測を行っていく必要があります。今回の観測はJUNOミッションのための最初の木星観測でした。
木星観測
キャンベラのコントロールルームからネットワークに接続し、アメリカのGoldstone深宇宙通信施設のアンテナを動かしながら観測をしました。なぜキャンベラにも巨大アンテナがあるのにわざわざアメリカのアンテナを使うのかというと木星がキャンベラから観測できない時間帯出会ったためです。電話会議システムでGoldstoneとつなぎ、観測ネットワークはVNC経由でスクリーン共有、もちろん観測所のアンテナの動きがわかるようにウェブカメラも観れるように設定されています。4つグループに分かれて観測前の設定をすませ、最初のグループがアンテナを動かすボタンをクリックし、ウェブカメラで巨大アンテナが動く様子を観た高校生からは歓声が。そりゃすごいですよね。
最初にキャリブレータというすでに明るさ(電波の強度)がわかっている天体を観測し、その後に木星の観測を行いました。キャリブレータは木星を5回観測するたびに数回観測するなどして空の変化をきちんと見積もれるようにしています。今回の観測はクロススキャンで行いました。クロススキャンとは国政を中心に十字を描くように望遠鏡を動かして観測する方法です。クロススキャン時に木星の周りの空の部分の電波の強さと木星を通過する時の電波の強さを記録し、その比較から木星からの正確な電波の強さを計算することができます。木星の周りの空の電波の強さ、木星の電波の強さをそれぞれ読み上げて記録シートに記録していくという作業を約1時間半行い、データを得ました。帰ってから計算をしてみたのだと思います。
日本からオーストラリアに来てアメリカのアンテナで観測するというなかなかない体験を高校生でできるというのはすばらしいですね。私も高校生の時に参加したとある天文学の実習をきっかけに今、天文学の研究をしているのでちょっと昔の自分を観ているようでした。そして全く関係のない私まで声をかけていただき、参加させていただいた方に感謝です。