Canpath
6314 views
2 応援!
0

留学2ヶ月での焦り

 こちらに来て全く新しい研究を始めて早2ヶ月。全く新しい研究内容といえば違うのかもしれない。正確には学部3年のときに少しだけ取り組んで中断していた研究をその道の専門家の先生のもとで再開させたのである。しかし思いのほか研究が進まずに壁にぶち当たっており、先生とディスカッションしても研究の舵をどの方向にとればいいのか悩んでいる(私だけでなく先生も悩んでいる)。
自分の仕事が停滞していると周りのことが気になってしまうのだ。

留学先の学生のスペックの高さ

こちらの大学の学部生友人のある日のfacebookでの投稿:「私の初めての学術論文が受理されました!」
日本では全く聞いたことのない投稿である。投稿を見たとき、「まじか」と思った。しかし、こちらの大学ではいたって普通のことのように扱われる。学部2年生の時点で初論文を執筆し、学部卒業までにさらに2本と共著論文3本書いた人がいたり、博士課程修了時でfirst autherで出版した論文が10本を超えている人はざらにいる。第一言語が英語という語学の壁の低さ、そして研究に取り組み、成果を出す速さとそのクオリティー。「いい卒論書くためには50本くらい論文読まなきゃだめよ」とポスドクの先輩に言われて1日2論文読破のノルマを達成している学部生(インド人)、「セミナー講演聞きながら論文読んだからちょっとまとめ方下手だけど」と言いながら完璧に論文の要約をこなす修士学生・・・。そう、自分よりできる人ばかりの環境で焦るのは当たり前なのかもしれない。

同期の共著論文の出版

ある日、その日に出版された論文をチェックしていたところ、日本の研究室の同期二人が共著に入った論文が出版されていた。彼らは同じ研究のプロジェクトチームで別々の天体を担当しているが、チームのミーティングで他の人の天体についても議論するので他のチームメンバーが書いた論文にはほぼ自動的に共著者として名前が載るのだ。私は学部時代には1年間ずっと解析システムの開発のような研究をしており、記録した観測データも重大な誤差を含んでいたため、学術論文にまとめれるような内容ではなかった。そしてオーストラリアに来てから全く新しい研究を始めて停滞している最中だ。対して彼らは二人とも学部時代に解析した天体の結果について論文にまとめている最中だ。チームの査読中の論文が1本、彼らの論文がそれぞれ受理されればさらに2本、同期の名前の乗った論文がこの世に出る。私も論文は書きたいし国際学会でも発表したい。でも発表できるネタがないというもどかしさ。おもしろいけれど結果が出にくくて論文にしにくそうなテーマを選んで、さらに同期に先を越されて「あー、研究キャリアで置いてかれた。」と嘆く日々である。

いくら焦っても、いくら嘆いても時間は有限。限られた可能性の中で打破できる部分を探す研究の旅は続きそうだ。

この記事を書いた人

Canpath user icon
Chey Saita
現在地:日本
ベルギーで幼稚園時代2年半、マレーシアで小学・中学時代4年間過ごす マレーシアでは英国系インターナショナル・スクールに通う 帰国後は兵庫県立芦屋国際中等教育学校に編入。3期生。 鹿児島大学理学部物理科学科宇宙コース->鹿児島大学大学院理工学研究科物理・宇宙専攻 第2回サイエンス・インカレ ファイナリスト IAC2014(宇宙国際会議)のJAXA学生派遣プログラムの代表生 トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム 1期生 オーストラリア国立大学にて電波天文学を研究するために留学

Chey Saitaさんの海外ストーリー