「何の研究をしていますか?」と聞かれたら「天の川の星と星の間にある目には見えないものの研究をしています」と答えるようにしています。そんな「目に見えない」ものを見ている望遠鏡に行ってきました。私が研究で実際に使っているデータを観測したパークス望遠鏡です。1961年に建てられ、ファーストライトを迎えたパークス望遠鏡ですが、50年以上経った今でも現役でバリバリ活躍している望遠鏡です。様々なアップグレードが行われ、最初と比べて感度が1万倍もあるんだとか。2016年からは地球外生命体探査プロジェクトSETIにも参加することが決まっており、今後も活躍が期待できる望遠鏡です。
まずはビジター・センターに行き、展示を見ました。ここにはパークス望遠鏡の歴史やサイエンス、観測されたデータの活用方法や最新の機器のレプリカなど望遠鏡を知るためにとてもいいものが揃っています。もちろん展示だけでなく、3Dシアターもあり、30分程度の火星探査の3Dムービーを見ることができるようになっていました。
事前に連絡を取っていたスタッフさんと会い、望遠鏡の中や周りも案内してもらえました。望遠鏡の周囲はヘルメット着用が義務付けられています。
望遠鏡の土台部分に入り、パックエンドや観測の記録機器とかキッチンとかを見せてもらいました。現在は完全にリモート観測になっており、パークス望遠鏡まで来て観測する人は全然いませんが、昔は泊まり込みでここで観測をしていたようです。光赤外ではなく電波なので昼夜問わずに観測ができてしまいます。12時間連続での観測をする人も中にはいるので疲れて眠ってしまわないように、(全リモート観測仕様に整備されるまでは)「15分に1度押す」ボタンがありました。「15分に1度押す」ボタンを押さないと、望遠鏡の塔内や宿泊施設にサイレンが鳴り響き、メンテナンスや非常スタッフに緊急連絡が行くそうです。この望遠鏡、下を向くとお皿の部分が地上についてしまうので何かの間違いでそのようなことが起こらないようにきちんと観測者が起きているのか、知る必要があったんですね(いまは望遠鏡の周りにセンサーを取り付けて勝手に地面をヒットしないようにプログラムし直されています)。こちらは望遠鏡手動コントロール板。全自動になったいまでもメンテナンスなどの時は手動に切り替えてこのコントロール板から操作するんだとか。
こちらは西オーストラリア州に建設される次世代センチ波望遠鏡ASKAPのテスト用のアンテナ。ここで受信機の性能テストなどをしたのちに西オーストラリアに輸送するんだとか。
ビッグバンの名残である宇宙背景放射を最初に観測した歴史ある望遠鏡。宇宙背景放射の発見の論文は北半球の研究チームから出ていますが、最初に観測されたのはこのアンテナでした。ただ、宇宙背景放射であるということはわからなかったので望遠鏡のノイズと解釈していたようです。
“The Dish"(邦題は「月のひつじ」)という映画があります。アポロ11号が月に着陸し、初めて人が月を歩いたあのシーンを中継していた望遠鏡のひとつにパークス望遠鏡があったのですが、その出来事を実写版にした感じの映画です。実際にパークス望遠鏡で撮影されたそうでその撮影場所や裏話も聞くことができました。
普通はビジター・センターしか入ることができないのですが、64mの望遠鏡は見るだけでも圧巻です。オーストラリアのパークスに来たらぜひ足を運んでみてください。